UR西日本×むすびえ~団地からひろがる、新しい地域のつながり~(前編)
高度経済成長期の「量」から豊かな住環境の「質」へと転換する独立行政法人都市再生機構(以下UR)のまちづくり。孤独・孤立を防ぎ、地域のコミュニティを活性化するための「ゆるやかなつながり」の必要性がこれまで以上に高まっています 。
一方、全国に広がる「こども食堂」は多世代が集い、顔の見える関係を築くコミュニティとして、その役割を強めています。
こうした両者の方向性が共鳴し、UR西日本支社とむすびえは2025年夏、UR団地の集会所等を活用した取り組み「DANCHIつながるーむ~夏休みは団地で楽しもう!~」で連携。団地で活動するこども食堂とのイベントを開催しました。まちづくりと居場所づくり、二つの領域が重なり合うとき、どんな未来が描けるのか。本インタビューでは、UR西日本支社の高原支社長と認定NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえ理事長 三島の対談を前編・後編でお届けします。
――はじめに、それぞれのお立場から「まちづくり」への想いをお聞かせください。
高原 功 氏(UR西日本支社支社長、以下:高原支社長):URは、2025年7月に設立70年という節目を迎えました。前身である日本住宅公団は、戦後の急速な都市部への人口流入により深刻化した住宅不足を解消するため、住宅を「建てる」ことから事業をスタートしています。1966年から40年間続いた「住宅建設五箇年計画」にも位置付けられ、日本の住宅政策の一翼を担ってきました。その後、幾度かの組織改編を経てURとなり、現在に至るまでの約20年間は、大都市や地方での都市再生、賃貸住宅の管理、災害対応支援など、まちづくりを通じて社会課題の解決に取り組んでいます。西日本支社では、関西圏を中心に約20万戸の賃貸住宅を管理し、団地及び地域に暮らす方々の生活の質をどう高めていくかを重要なテーマとして取り組んでいます。
今回の「DANCHIつながるーむ~夏休みは団地で楽しもう!~」も、その一環です。特に夏休み期間中、子どもたちが安心して過ごせる居場所をつくれないかという思いからスタートしました。地域の皆さまにとって、安全・安心で快適なまちをどう形成していくのか、そのためにどのようなパートナーと手を組むべきかを常に意識しながら、まちづくりを進めています。

三島:「安心・安全で快適に暮らせるまち」を維持していくには、地域の中に自然と人が集まり、関わりが生まれる場が必要だと私も感じています。こども食堂は月に1、2回の活動であることが多いですが、「子ども」と「食」を中心に多世代が集い、交流が生まれる場であることが大きな特徴です。回数は少なくても、継続して顔の見える関係性が育まれていけば、結果として地域社会における安心感やまちづくりにも貢献できるのではないかと思います。こうした取り組みをURさんはじめ、さまざまなパートナーの皆さんとともに盛り立てていきたいと考えています。
―― URの「量」から「質」へと舵を切られる中で、人と人とのつながりに着目されたのはなぜでしょうか。
高原支社長:私たちは公団設立70年の節目を迎えるにあたり、「ゆるやかに、くらしつながる。」という事業メッセージを策定しました。時代とともに暮らし方も変わり、核家族化が一層進む中で、都市に暮らす多くの方が「ひとりだけれど孤独ではない」関係性を求めるようになっています。そうした社会の変化を背景に生まれたメッセージです。
三島:まさにこども食堂とも通じる部分が多いと感じます。かつての自治会や町内会などは、強いつながりはあるものの、義務感やしがらみが負担となり、次世代に継承することが難しくなったといわれています。一方で、現代は、便利さと引き換えに、困ったときにSOSを出しづらい社会になってしまった面もあると思います。

高原支社長:また、災害など、万が一の場面では、自助だけではどうしても対応しきれない局面が出てきます。公的支援が行き届くまでの時間を、地域の共助で支え合うためにも、日頃から顔見知りであることや、プライバシーを保ちつつ声を掛け合える関係性を築いておくことが大きな力になります。
三島:日本は災害大国ですから、地域にどんな人が住んでいるか、日常的に知っておくことが防災にもつながりますね。月に数回でも顔を合わせていれば、さりげない気配りが生まれ、問題の深刻化を防ぐことにもつながります。
多くのこども食堂は、地域の誰もが行くことができ、参加者の主体性が尊重される「ゆるやかなつながり」が育つ場として機能しています。こうした無理のない関わりを継続していくことが、横のつながりを生み、地域の信頼関係の基盤を支えていくのだと思います。
自然と全国で1万2,000カ所を超えるまでに広がったのも、地域の人々に「負担なく続けられるつながり」が求められてきた結果なのかもしれません。
高原支社長:時代の変化を踏まえれば、縦と横のつながりを含めて、まちや人と「ゆるやかにつながる」在り方こそ、今の時代のニーズに合ったコミュニティの形だと考えています。
―― なぜ今回「こども食堂」に着目し、むすびえとの協働に至ったのでしょうか。
高原支社長:団地においても高齢化や地域コミュニティの希薄化が課題となっています。「これからの団地はどうあるべきか」を関係機関とも議論しながら、2014年度からは、団地やその周辺を地域の医療・福祉の拠点にする取り組みも進めてきました。具体的には、医療・福祉施設の誘致、ユニバーサル仕様の住宅導入、多世代交流の促進などです。さらに来年度からは「こどもつながるUR」を掲げ、子育て世帯向け施策をより一層強化していく予定です。
多世代の方がいきいきと暮らし続けられる住環境を目指す施策の一環として、西日本支社では2023年から、子どもたちの居場所づくりや子育て世代の負担軽減を目的に、団地集会所を開放する「DANCHIつながるーむ~夏休みは団地で楽しもう!~」を実施しています。
こうした取り組みは継続することが重要ですが、同時に、地域とのつながりをさらに広げていく必要も感じていました。取り組み開始から3年目となる今年(2025年11月時点)、より多くの方に興味を持っていただく新しいきっかけを探す中で、「こども食堂」に着目しました。その中で、むすびえさんにご協力をお願いした次第です。「多世代」「ゆるやかなつながり」という理念が、URの目指すまちづくりと重なる部分が非常に多かったことが、協働の大きな決め手になりました。

三島:こども食堂は「子どもを真ん中にした場」なので、多世代が参加しやすく、年齢や背景を超えて交流が生まれやすいのが特徴です。また、「食べる」という当たり前の共通した営みを通して安心感を育み、コミュニケーションを生み出します。こうした場が団地のすぐ近くに増えることで、地域全体の支え合いにもつながるはずです。今回の取り組みは未来に向けた大きな一歩だと感じています。

―― 実際に始めてみて、現場からはどのような変化や手ごたえを感じられましたか。
三島:団地の集会所という、住民の方々が歩いていける場所でこども食堂を開けたことで、自然に集まる流れが生まれたことは嬉しいですね。協賛パートナー企業の方にも関わっていただき、地域の中に「協力し合える土台」が少しずつ形になりつつあるのも、現場の変化として感じています。
高原支社長:開催したこども食堂では世代やご事情に関わらず、誰もが気軽に参加できる、とても温かい場所になっていた印象です。URのスタッフは、団地で行われるこども食堂を多世代が集う「みんな食堂」と呼ぶほどです。

三島:そうしたひらかれた場をきっかけに、住民同士の会話が生まれます。日々の暮らしの不安や課題が共有されやすくなりますし、そこから解決に向けた動きが生まれたり、住民自らが主体となって、暮らしをより良くしていく力が引き出されていく。そうした長期的な変化の芽が見え始めていることに大きな手ごたえを感じます。
高原支社長:まさにその点は、URとしても大切にしたい価値です。「こども食堂」はいわゆる貧困対策というイメージを持たれがちですが、実際には子どもたちが少しずつ周囲と関わり、社会性を育む場としての役割も大きいと感じています。多様な子どもたちを包み込む力のある環境です。
URが目指す方向性と、むすびえさんが掲げる理念は重なる部分が多いと感じており、今後もUR西日本支社としては、連携を深めながら、団地で活動するこども食堂を引き続き支援していきたいと考えています。
こうした取り組みはこれからの地域をどのように支えていくのでしょうか。次号でお届けする後編では、こども食堂がもたらす価値の広がりと、URとむすびえが描く『これからのまちづくり』の姿をさらに深掘りしていきます。
※本記事は2025年11月に実施した対談をもとに構成しています。