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UR西日本×むすびえ~団地からひろがる、新しい地域のつながり~(後編)

2026.03.05 UP

団地を舞台にしたこども食堂の取り組みは、単なる食事の提供にとどまらず、世代を超えたつながりを自然に育む地域の拠点として、新しい役割を見せ始めています。

前号では、独立行政法人都市再生機構(以下UR)西日本支社がなぜこども食堂に着目し、むすびえとの協働に踏み出したのか、また現場で生まれつつある変化について、UR西日本支社の高原支社長と認定NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえ(以下、むすびえ)理事長 三島の対談でお届けしました。後編では、こうした動きがどのように地域の価値や安心につながっていくのか、そして「団地からはじまるまちづくり」の未来をどのように描いているのか――これからの地域づくりのヒントを探っていきます。

前編はこちらからご覧ください。

―― 今回の協働を踏まえ、地域を支える「ソフトインフラ」としても注目されるこども食堂の存在を、URとしてはどのようにとらえていらっしゃいますか。

高原 功 氏(UR西日本支社支社長、以下:高原支社長)URが団地を経営するうえで、単に住まいを提供するだけでなく、地域全体のエリア価値を高めることは欠かせない視点だと考えています。コミュニティが醸成され、活気がある地域には自然と人が集まります。そのため、団地に限らず、周辺地域の魅力を高める取り組みを、ハードとソフトの両面からさまざまなパートナーと進めてきました。

その中でも団地で活動するこども食堂は「地域に興味を持って足を運んでいただくきっかけ」として大きな役割を果たしてくれています。

三島:実際に政府のウェルビーイング指標でも、こども食堂の有無が評価項目に含まれ始めています。こども食堂が地域の豊かさや安心感につながるという認識が広まりつつあるのを感じています。

―― こども食堂で生まれるゆるやかなつながりは、一人ひとり前向きな力や、いざというときの地域の力(レジリエンス)にもつながるといわれますが、どのような点にその可能性を感じておられますか。

高原支社長:日常的に人が顔を合わせる場があることは、災害時の助け合いや防犯の面でも効果があります。こども食堂は、地域を支えるソフトインフラとしての可能性を大いに持っていると感じています。

三島:まさに、むすびえ創設時から目指してきた姿です。将来、どこに住むかを選ぶとき、「こども食堂が近くにあれば安心だね」と当たり前のように思ってもらえる社会を目指してきました。こうした場があることが、結果として地域のレジリエンスを高めることにつながると確信しています。

私自身、レジリエンスという言葉を「負けへんで」という前向きな気持ちだと解釈しています。何かあっても立ち上がり、もう一度がんばろうと思えるかどうか――その力の土台として、まず安心感や信頼感といった心のベースが欠かせません。地域で家族以外の誰かの優しさを目の当たりにすることで「人は信じられる存在なんだ」と思える。こうした日常の小さな体験の積み重ねが「負けへんで」と乗り越えられる気持ちを育てていくのだと思います。

高原支社長:地域の皆さんとの関係性をどうつくるか、という点はURとしても常に意識しています。一方的に支援するのではなく、住民の皆さんが主体となって活動を続けられるよう、伴走する形で連携していくことを大切にしています。

「DANCHIつながる―む~夏休みは団地で楽しもう!~」で実施されたプログラミング教室

―― 今回の関西圏での取り組みを踏まえ、今後どのような広がりを見据えていらっしゃいますか。

高原支社長:まずは今回の4団地での開催を通じて、実績を積み上げながら、地域社会にどのように貢献できるかを模索していきたいと考えています。「こども食堂があるエリアなら安心だ」と思っていただけるような認知の広がりは、公共・民間を含めた地域の価値向上にもつながります。

三島:その「安心」を形作るのが、多様な人が関わる仕組みだと感じています。こども食堂は子どもや家庭を支えるだけでなく、さまざまな人が社会貢献に参加するハブにもなっています。企業や団体、市民がそれぞれの枠を超えて共創することで、可能性がより広がり、現代の社会課題の解決に向き合うモデルにもなりつつあるのではないでしょうか。

こうした継続的な関係が地域の信頼関係の基盤となってURさんの言われたソフト面、ウェルビーイングの向上にも寄与すると考えています。

こども食堂には子どもを中心に多世代が集う(URウェブマガジン「うちまちだんち」より転載)

――今回の協働を通じて、お二人が改めて感じられた“コミュニティの力”とはどのようなものでしょうか。

高原支社長:URは「美しく、安全で、快適なまち」をつくることを目指していますが、その裏側ではお住まいの方の「暮らしの不安」をどう取り除くかについて常に考えています。そこで改めて大きな存在だと感じているのがコミュニティの存在です。

三島:私自身もワンオペ育児の経験があり、地域で子どもが安心して過ごせて、子育てを支え合える場所の必要性を身にしみて感じてきました。

高原支社長:ハード面の整備だけでは解決できないことも、人との関わりや言葉のやりとりで軽くなることがあります。家族には言いづらいことも、身近な他人だからこそ話せることがある。かつては近くに住む気の許せる他人が担っていた役割を、現代では地域がどう補うかが問われています。

三島:そうした「現代における地域の役割」を形にしたのがこども食堂だと思うのです。だからこそ、このような場所は、多世代にとって生きがいややりがい、心のつながりを生みだす「現代版コミュニティの再構築」そのものだと言えるかもしれません。     

――お二人のお話を聞いていると「団地から日本のまちづくりを変える」ような広がりを感じます。最後に、それぞれの立場から今回の協働を通じて感じた「地域のこれから」への想いをお聞かせください。

高原支社長:URは賃貸住宅の供給、都市開発、地方再生、災害対応支援などに取り組んでいますが、究極の目的は「心地よい暮らしをしていただく」ことです。その実現にはコミュニティの力が欠かせません。

三島:コミュニティで育った子どもたちが、成長し担い手として戻ってくるのも、こども食堂の特徴の一つです。特別な「教育」ではなく、日常の積み重ねの中で、いざというときに支え合う力が自然と育まれていく。その姿を見ていると希望を感じます。

高原支社長:私自身のモットー「No Rain, No Rainbow」は、まさに三島理事長の言われた「負けへんで」の精神にも通じるものだと感じます。課題を乗り越えてこそ、虹のような明るい未来が見えてくる。今後も色々な方と連携しながら、良質なコミュニティや暮らしをどう育んでいくかについて一緒に考え、地域の活性化に貢献していきたいと思っています。

三島:こども食堂の活動には、時に雨のような大変さもありますが、世代を超えて受け継がれてきたからこそ、いま虹のような未来が見えてきていると感じる瞬間があります。一度うまれたコミュニティベースのつながりは、時代の変化にも左右されにくい強さを持っています。多世代が自然につながれる場が当たり前に受け止められる社会を皆で広げていきたいと考えています。

そしてさまざまなこども食堂の姿を示しながら、多様性を包摂できる社会の実現に向けて、皆さんとともに歩んでいきたいと思います。

※本記事は2025年11月に実施した対談をもとに構成しています。