社会貢献からつむぐ、これからの企業価値~タカラスタンダード株式会社~
システムキッチンやバスを中心とした住宅設備機器のリーディングカンパニーとして、日本の暮らしを支え続けてきたタカラスタンダード株式会社。同社は2022年に創業110周年を迎え、「次のスタンダードをつくるんだ」というブランドメッセージのもと、「変革」をテーマに新しい挑戦に取り組んでいます。その一つが、2022年から3年間継続している、むすびえを通じたこども食堂への寄付です。さらに2025年からは、こども食堂へシステムキッチンを寄贈するなど、活動の幅を広げています。
これらの社会貢献活動を進めてきたのが、営業本部コミュニケーション推進部です。まだ専門部署のない頃に、社会貢献の必要性を感じ、こども食堂への寄付を社内に提案。同社の社会貢献のあり方を模索してきました。社内で先陣を切って活動してきた背景には、どのような思いがあったのでしょうか。
今回は、このプロジェクトを担当する、営業本部コミュニケーション推進部の植村さん、野口さん、広報の井上さんにお話を伺いました。

創業110周年の今こそ。売上の次に目指すもの
こども食堂の支援を決めた背景には、SDGsやESG経営を重視する社会の流れがありました。当時は、社会貢献に取り組んではいるものの十分とは言えず、専門部署もないような状態。企業として、売上を追求するだけでなく、何か社会貢献をすべきではと考えていましたが、何から始めたらよいのか手探りの状態でした。そんな折に迎えたのが2022年の110周年です。「次のスタンダードをつくるんだ」というブランドメッセージは、当社の企業理念である3つの“Standard”が元になっています。住生活水準の向上を目指す「Living Standard(住生活水準)」、社会との調和を重んじる「Ethical Standard(倫理規範)」、そして品質を追求する「Quality Standard(品質基準)」の3つです。「次のスタンダードをつくる」というからには、倫理規範においても一流でありたい。110周年の今こそ、企業価値を高めるチャンス。「誰かがやらねば」という思いで、このプロジェクトを立ち上げました。
連携の決め手は、事業との親和性とスピード感
110周年のテーマは「変革」。社内では、新しいことにチャレンジしようという機運が高まっており、社会貢献活動もその流れで提案しました。グループの企画会議で「未来を担う子どもたちのために何かしたい」という話になり、名前が挙がったのが「こども食堂」。むすびえは、グループのメンバーから紹介されました。話を聞いたところ、むすびえなら寄付の仕組みが確立されており、託した寄付が全国のこども食堂支援に確実に活かされると分かりました。当社の事業と関わりの深い「食」を通じた、こども食堂への寄付は、経営層からも高く評価され、スムーズに承認を得ることができました。寄付が決まってからの手続きも分かりやすく、周年記念に合わせてまずは寄付を開始することができました。これは、社会貢献に対して手探りだった状態を考えると、大きな一歩でした。また、当社にとって子ども支援は初めての取り組み。早く実現させたかったので、むすびえにスピード感をもって対応いただけたことに、とても満足しています。以来、3年間寄付を継続してきました。むすびえを通じて、こども食堂の現状を理解すると共に、今後さらに当社にできることはないか、むすびえの担当者と連携し検討しています。
こども食堂を支える、使いやすいキッチンを届けたい
今年は、 業界団体であるリビングアメニティ協会主催の「ALIAこどもプロジェクト」を通じて、こども食堂へシステムキッチンを寄贈しました。「ALIAこどもプロジェクト※」は、所属企業がこども食堂へ住宅設備や建材を寄贈するというプロジェクト。トイレや洗面台を提供するという選択肢もありましたが、当社はキッチンのトップシェアメーカーです。こども食堂に集まる人たちに当社のキッチンを使ってもらいたいという強い思いがありました。
こども食堂へのキッチンの施工は、もともとキッチン設備が整っていない環境に設置するなど、一般的なリフォーム工事とは異なり労力もかかる場合があります。普段から当社のキッチン施工を担当いただいている工務店に、負担をかけるのは心苦しかった一方で、地域のことをよく理解している彼らだからこそ頼みたいという思いがありました。率直に、こども食堂で当社のキッチンを使ってほしいので、施工を依頼したいと伝えたところ、「ぜひ一緒にやらせてください」と快く引き受けてもらうことができました。おかげで、実際にこども食堂にキッチンを設置すると、ボランティアの方々が本当に喜んでくださいました。地域の企業も、何か地域貢献できる機会を模索しているのかもしれません。同じ思いでつながることのできた、うれしい瞬間でした。

このプロジェクトは社内でも大きな反響がありました。社長自ら現地を訪問し、子どもたちから手渡された感謝状は、今も社長室の椅子から見える正面の位置に、大切に飾られています。担当した社員も大きな達成感を得られ、このプロジェクト以後、自身の家族を連れてこども食堂に通っているそうです。
私たち自身も、こども食堂のみなさんにキッチンを引き渡したときに感じた、あの何とも言えない爽快感は忘れられません。準備は大変なことも多かったですが、その苦労さえも喜びに変わる素晴らしい体験でした。社会に貢献することは、めぐりめぐって自分自身の人生の豊かさにつながる。この感動を、一人でも多くの社員に味わってほしいと心から思っています。

目指すのは、社会貢献が当たり前になる「次のスタンダード」
今後も現在の寄付活動は継続していきます。その上で、全国約160カ所のショールームと6000人以上の社員という私たちの資産を活かし、より地域に根差した活動を展開していきたいです。例えばボランティア休暇制度を利用して、社員がこども食堂のお手伝いすることや、ショールームを活かした新たな支援を考えています。3年前は営業企画部の中の1グループだった私たちは「コミュニケーション推進部」に昇格。社会貢献活動を通じて、「会社を一流にする」ことが部のミッションとなりました。これまでの活動は、社内報などを通じて社員にも認知が広がり、人員追加の社内公募には多数の応募が集まるなど、社内での注目も高まっていると感じます。会社が一流になるためには社会貢献が大事な位置を占めます。その点から、社員も自社の社会貢献には敏感な目を向けているのではないでしょうか。
そうした期待に応えられるよう、これからも、企業が社会貢献をすることが当たり前となるような、私たちならではの「次のスタンダード」をつくることに尽力していきたいと思います。

ALIAこどもプロジェクトとは
一般社団法人リビングアメニティ協会に所属する企業・団体が、こども食堂へ住宅設備・建材を寄贈するという、2022年度から続くプロジェクト。